2025/12/11
棟梁という生き方







大工である私が、今回は玄関土間の洗い出しを自ら仕上げました。
本来なら左官の守備範囲。
しかし棟梁という立場は、
木を刻むだけでは務まらない。
家づくりに関わる職種すべての仕事を理解し、
その本質を掴んでこそ、空間全体の納まりを導ける。
洗い出しはごまかしの利かん仕事。
下地の水引き、骨材の具合、
そして“洗うその一瞬”の見極めが勝負。
図面には書けん、言葉にも伝えきれん、
職人の嗅覚と勘が問われる世界です。
大工として木を扱いながらも、
左官の呼吸を知ることで、
建物の仕上がりは一段と深みを増す。
家というものは、
誰か一人の技でできているのではなく、
職人たちの魂が積み重なって形になるもの。
だからこそ棟梁が率先して手を出し、
各職の“間合い”を知っておくことが大切だと考えています。
今回の洗い出しも、
玄関の顔に相応しい落ち着きと風格が出せました。
家がまた一つ、息をしたような気がします。
